転勤族サウナ愛好家の小規模な生活

関西出身の熊本在住サウナ愛好家。大学進学でおんせん県、就職し彩の国→かごんま→くまモン県と津々浦々と渡り歩く。二児の父らしい。日々あったことをつらつらと書き連ねていきます。

度重なる被災から華麗なる再興!名湯、名水が堪らない垂玉温泉 瀧日和

熊本は南阿蘇村河陽地区にある垂玉(たるたま)温泉。かつて北原白秋与謝野鉄幹など歌人が訪れたこともある由緒ある温泉だ。熊本地震や九州豪雨などによる甚大な被害を受け、長年の休業を余儀なくされていたが、2021年4月18日に屋号を瀧日和と変更して再スタートした施設である。

 

住所…熊本県阿蘇郡阿蘇村河陽2331

電話…0967-67-0006

営業時間…10時〜19時(受付18時まで)

     水曜定休

入浴料…大人 800円

    子供 400円(未就学児無料)

ホームページ…https://tarutama.jp

 

f:id:DDDtenkinzoku:20210508171620j:image

f:id:DDDtenkinzoku:20210508165150j:image(垂玉温泉山口旅館から被災により5年振りに日帰り温泉として再スタート。敷地内には家族湯もあり)

 

江戸時代に開湯した歴史を持つ垂玉温泉。元々は山口旅館という明治19年1886年)開業という歴史ある旅館で、垂玉温泉唯一の宿であり、日本秘湯を守る会の会員だったそうだ。しかしながら、熊本地震と九州豪雨により被災し長年の休業を余儀なくされたのだが、この度5年振りに日帰り温泉としてスタートを切ったばかりである。


f:id:DDDtenkinzoku:20210508163658j:image
f:id:DDDtenkinzoku:20210508163820j:image
f:id:DDDtenkinzoku:20210508163635j:image(強烈な温泉の蒸気を上げる配管と地獄蒸しを出来るスペース。石碑には与謝野鉄幹北原白秋など紀行文「五足の靴」を記した5人が山口旅館に宿泊したことを示す石碑が)

 

駐車場に車を停めて降りると辺りには強烈な硫黄の匂いが立ち込める。このレベルの硫黄臭は別府温泉以来であり、強烈な温泉の蒸気を上げる配管や温泉の成分で色が変わった排水溝などを見て、この温泉の泉質が極上であることを確信。早くもワクワクしてしまう。

 

f:id:DDDtenkinzoku:20210508174302j:image
f:id:DDDtenkinzoku:20210508165213j:image
f:id:DDDtenkinzoku:20210508163606j:image(垂玉温泉名物である金龍の瀧。この瀧から湧き出す水が垂玉川の源流となるらしい。敷地内にある垂玉の名水もこの滝から湧き出る岩清水)

 

まず最初に目に付くのはシンボルである金龍の瀧。垂玉川の源流でもあり、この瀧から垂玉温泉の源泉が湧き出るそうだ。震災前は瀧の側で温泉を楽しめたそうだが、現在では被災したため出来ず。しかし、オーナーさんによると震災後にこの源泉が枯れずに、また創業当時の石垣も残っていたことから再建を決めたそう。シンボルマークを超えた神通力というか運命めいたものを感じてしまうエピソードだ。敷地内にある垂玉の名水もこちらから湧き出す岩清水で、間違いなく水質が良いのがわかる。


f:id:DDDtenkinzoku:20210508163743j:image
f:id:DDDtenkinzoku:20210508164036j:image
f:id:DDDtenkinzoku:20210508163724j:image(受付から大浴場は離れた所にあり。周りが山々に囲まれているため、小鳥の囀りなどが心地良い)

 

受付を済ますとロッカーの鍵を渡され、そのまま少し離れた大浴場まで歩を進める。大浴場の見た目は何処となく日本旅館をスタイリッシュにした感じだが、脱衣所に入るとかつての旅館を営んでたのがわかる和風な感じ。横に流れる渓流の音が脱衣所でも聞こえるため、露天風呂などは間違いなく気持ち良いだろうと思いながら服を脱ぐ。

 

f:id:DDDtenkinzoku:20210508194045j:image
f:id:DDDtenkinzoku:20210508194038j:image
f:id:DDDtenkinzoku:20210508194053j:image
f:id:DDDtenkinzoku:20210508194041j:image(再オープンしたばかりということもあり、浴場、館内とも非常に綺麗。男湯は露天に寝湯、女湯は立ち湯に陶器風呂が設置。公式サイトより転載)

 

浴場に入ると全体に漂う硫黄の香り。少し赤みがかった黄緑色の温泉に湯の花が舞う。個人的に湯の華がある温泉は大好物のため、これだけで嬉しい。単純硫化泉でトロミがあるというよりは湯冷めせずにポカポカと温まる感じの泉質。北原白秋与謝野鉄幹が感銘したのが良くわかる名湯だ。何度も災害に見舞われながら復旧されたのが何より嬉しくなる。ちなみに、金龍山垂玉寺の修行者が利用していたことから垂玉温泉という名が付いたそう。


f:id:DDDtenkinzoku:20210508163840j:image
f:id:DDDtenkinzoku:20210508163859j:image(貸切風呂も家族連れに人気であり、ネーミングから再興にかける想いが伝わってくる)

 

サウナは雛壇2段で4人ほどのスペース。メトス製のストーンストーブが入口から見て左手に鎮座。大きさ、作りは熊本市内の大福湯に似ている。壁材は恐らく杉板であり、雛壇も同じ材質で出来ており、香ばしい独特の清涼感ある香りが心地良い。温度は78〜80度ほどで熱圧は弱め。ガツンと来るサウナが好きな人には物足りないだろうが、じっくりと温泉に浸かってから味わうと良いサウナだろう。


f:id:DDDtenkinzoku:20210508163618j:image

f:id:DDDtenkinzoku:20210508171643j:image
f:id:DDDtenkinzoku:20210508171647j:image(受付横にはカフェスペースやウッドデッキも。地獄蒸し用の野菜や玉子、ドリンクなども充実している)

 

水風呂はサウナのすぐ隣に設置。膝丈ほどの深さに大人2人ほど入れる大きさで花崗岩で出来た浴槽が何処となく涼しげだ。浴槽の下から新水を入れているタイプでオーバーフローは凄い量というわけではないが、常に浴槽から水が溢れているのも好ポイント。想像通り、水質は間違いなく、垂玉の名水という名に恥じないクリア感。16度ほどでしっかりと冷たく、芯までキリッと来るタイプの素晴らしい水風呂だ。


f:id:DDDtenkinzoku:20210508171640j:image(トレーラーハウスなども敷地内にあり、今後はグランピング施設などを展開する予定もあるとかないとか)

 

水風呂を上がり、露天風呂へ。すぐ側に流れる瀧や渓流のせせらぎ、山を彩る木々の数々や露天に植えられた楓、囀る小鳥…月並みな表現だが、まさに都会の喧騒を忘れて自然に耳を傾けられる温泉だ。露天風呂に設置された寝湯に入り、目を閉じると自然と一体化したかのように錯覚してしまう。四季の移ろいによって雰囲気が変わるのも醍醐味だろうし、こんな素晴らしい温泉が復興したことに感謝しかない。

 

熊本地震や九州豪雨など度重なる自然災害から不屈の精神で復活した名湯が多くの人に再び愛されるようになるのを心から願うばかりである。